外壁の施工や塗装をする際、「コーキング」という言葉がよく使われます。
コーキングは外壁の目地を埋めるために欠かせないアイテムですが、その具体的な役割について知っている方は多くありません。
外壁の補修や塗装を検討している方のなかには、「コーキングってなに?」「どんな種類があるの?」と気になっている方もいるのではないでしょうか。
この記事では、コーキングの概要や役割、種類や注意すべきサインなどについて詳しく解説します。
外壁に使われるコーキングとは
外壁に使われるコーキングは、建物の外壁材同士の継ぎ目やサッシ周りなどの隙間を埋めるために使用される充填材です。
主な役割は、雨水の浸入を防ぐ防水機能と、建物の揺れや温度変化による外壁材の伸縮を吸収する緩衝機能です。
サイディングやALC外壁などのパネル状の外壁材を使用する場合、パネル同士の隙間にコーキングを施工することで、建物全体の耐久性と美観を保つことができます。
コーキング材には、ポリウレタン系や変成シリコン系など、さまざまな種類があり、使用箇所や要求される性能に応じて選択されます。
シーリングとの違い
コーキングとシーリングは、外壁工事において実質的に同じ意味で使用されることが多く、明確な違いはありません。
両者とも隙間を埋めて防水性を高める目的で使用される充填材を指しますが、厳密には若干のニュアンスの違いがあります。
コーキングは「隙間や穴に詰め物をする」という意味合いが強く、シーリングは「密閉する」という意味合いが強いです。
また、使用される場所によって呼び方が異なることもあり、船舶業界ではコーキング、自動車業界ではシーリングと呼ばれる傾向があります。
外壁工事の現場では、これらの用語は互換的に使用されており、施工方法や使用される材料に大きな違いはありません。
コーキングの役割
ここでは、コーキングの具体的な役割を紹介します。
サイディング・ALCの隙間を埋める
コーキングの主要な役割の一つは、サイディングやALCパネルなどの外壁材の隙間を埋めることです。
サイディングやALCパネルは、工場で生産された建材を現場で取り付けるため、どうしても継ぎ目や隙間が生じます。これらの隙間をそのまま放置すると、雨水の侵入や気密性の低下につながります。
コーキング材を隙間に充填することで、外壁全体をシームレスに仕上げ、防水性と気密性を高めることが可能です。適切にコーキングを施工することで、外壁の耐久性が向上し、長期にわたって建物を保護できます。
外壁の補修
コーキングは外壁の補修にも重要な役割を果たします。
経年劣化や地震、気候変動などにより、外壁にひび割れや亀裂が生じることがあり、これらの損傷箇所にコーキング材を充填することで、効果的に補修を行うことができます。
特に、構造クラックと呼ばれる深いひび割れの場合、単なる塗装では対処できません。このような場合、ひび割れ内部にコーキング材をしっかりと充填することで、効果的な補修が可能になります。
また、コーキングによる補修は、外壁の美観を回復するだけでなく、さらなる劣化を防ぎ、建物の寿命を延ばす効果も期待できます。
ひび割れ防止・揺れの抑制
コーキングは外壁のひび割れを防止し、建物の揺れを抑制する重要な役割を果たします。
外壁材は温度変化や建物の動きによって膨張・収縮しますが、コーキング材の弾力性がこの動きを吸収します。これにより、外壁材同士の衝突や過度な応力を防ぎ、ひび割れの発生を抑制することが可能です。
特に、地震や強風などの外的要因による建物の揺れに対しても、コーキングが緩衝材として機能し、外壁材の破損を防ぎます。また、サイディングやALCパネルなどの外壁材の継ぎ目に適切にコーキングを施すことで、建物全体の剛性が向上し、揺れに対する耐性が高まります。
防水
コーキングの最も重要な役割の一つが防水機能です。適切にコーキングを施すことで、外壁の継ぎ目や隙間を効果的に封鎖し、建物内部への雨水の侵入を防ぎます。
特に、サイディングやALCパネルなどの外壁材の継ぎ目、窓枠周り、外壁と基礎の接合部などは、重点的にコーキング処理を行う必要があります。
コーキング材は水を通さない性質を持っており、適切に施工されれば高い防水効果を発揮することが可能です。
ただし、経年劣化によってコーキングにひび割れや剥がれが生じると、防水機能が低下するため、定期的な点検と補修が重要です。
空気の出入防止
コーキングは建物の気密性を高め、外部からの空気の侵入や内部の空気の漏出を防ぐ重要な役割を果たします。
外壁の継ぎ目や隙間、窓枠周りなどの開口部は、空気が出入りしやすい箇所です。これらの箇所に適切にコーキングを施すことで、不要な空気の流入を防ぎ、室内の温度と湿度を安定させることができます。
特に、冬季の寒気や夏季の暑気の侵入を抑制することで、空調効率が向上し、エネルギー消費の削減にもつながります。
適切な気密性の確保は、快適な室内環境の維持と建物の長寿命化に不可欠な要素です。
コーキングの種類
コーキングは一見どれも同じように見えるかもしれませんが、細かく種類で分けられています。
ここでは、主要なコーキングの種類を紹介します。
シリコン系
シリコン系コーキング材は、耐水性、耐熱性、耐候性に優れており、主にキッチンや浴室などの水回りで使用されます。
価格が安く、ホームセンターなどで手軽に入手できるため、DIYでもよく使用されているコーキングの一つです。
しかし、シリコン系コーキング材は塗装ができないため、外壁などの塗装が必要な箇所には不向きです。また、撥水性が高いため、施工部分周辺への汚染に注意が必要です。
変成シリコン系
変成シリコン系コーキング材は前述したシリコン系とは異なり、塗装が可能になっています。主に外壁や窓枠周りなどに使用されることが多いです。
耐候性や耐水性も良好で、幅広い用途に対応できる汎用性があります。ただし、シリコン系に比べて密着性が劣るため、使用場所に応じた選定が必要です。
また、ウレタン系コーキング材よりも耐久性が低い場合があるため、適材適所で使用することが重要です。
ポリウレタン系
ポリウレタン系コーキング材は、優れた密着性と弾力性が特徴です。
硬化後はゴムのような弾力性を持ち、建物の動きに追従しやすいため、コンクリートのひび割れ補修や木材の接合部分によく使用されます。塗装性も良好なため、上から塗料を塗ることも可能です。
しかし、最大の欠点は紫外線に弱いことです。屋外で使用する場合は必ずうえから塗装を施す必要があります。
耐候性はシリコン系や変成シリコン系に劣りますが、価格が比較的安いことから、塗装を前提とした外壁工事などでよく使用されます。
アクリル系
アクリル系コーキング材は、水性エマルジョンタイプの材料で、取り扱いが簡単なのが特徴です。うえから塗料を塗ることが可能であり、耐紫外線性も比較的高いです。
しかし、耐久性や耐水性が他の種類に比べて劣るため、現在では外壁工事での使用は減少しています。
水分が揮発して硬化する特性を持つため、硬化後に肉やせ(収縮)が起こりやすいのも欠点です。主に内装の目地や塗装下地処理、ALC板の目地充填などに使用されます。
ポリサルファイド系
ポリサルファイド系コーキング材は、耐油性と耐候性に優れた特性を持つ材料です。主に建築物の躯体目地やタンクの目地シール、コンクリート構造物の目地などに使用されます。
2液性の反応硬化型であり、硬化後も柔軟性を保ち、動きの大きい目地にも対応可能です。耐薬品性も高いため、化学物質を扱う環境での使用にも適しています。
ただし、高温多湿時には発泡する恐れがあるため、使用環境には注意が必要です。
油性
油性コーキング材は、コーキング材の中でも最も古くから使用されている種類です。主成分は天然の亜麻仁油で、酸素と反応して表面だけ硬化し、膜を形成します。
最大の特徴は、内部が硬化しないため、長期間にわたって柔軟性を保つことです。そのため、ひび割れの追随性が高く、昭和時代の防水工事では欠かせない材料でした。
しかし、耐久性が低く、経年によるひび割れが起こりやすいことから、現在では主に板金のはぜ折り部分のシールなど、限定的な用途で使用されています。
コーキングで注意すべき劣化のサイン
一般的なコーキングの寿命は5〜10年程度とされていますが、紫外線や温度変化、雨風などの影響を受けて劣化が進行します。劣化のサインを発見した際は、早急に補修やメンテナンスをすることが重要です。
ここでは、コーキングで注意すべき劣化のサインを紹介します。
肉痩せ
肉痩せは、コーキングの劣化を示す重要なサインの一つです。これは、コーキング材が経年変化によって収縮し、両端に隙間ができる現象を指します。
肉痩せが進行するとコーキングの防水性能が低下し、雨水の侵入リスクが高まります。特に、サイディングの目地やサッシ周りで発生しやすく、放置すると外壁材の劣化や内部構造の損傷につながる可能性があるため、注意が必要です。
早期発見と適切な補修が重要で、軽度の肉痩せの場合は増し打ちで対応できますが、重度の場合は打ち替えが必要となります。
ひび割れ
ひび割れは、コーキングの劣化を示す最も一般的なサインの一つです。紫外線や温度変化、建物の揺れなどによってコーキング材が硬化し、弾力性を失うことで発生します。
初期段階では細かな亀裂として現れ、時間とともに深さと幅が増していきます。ひび割れは、雨水の侵入経路となるため、放置すると建物内部への水の浸入や外壁材の劣化を引き起こす可能性が高いです。
ひび割れの程度によって対処法が異なり、軽微な場合は部分的な補修で対応できますが、広範囲に及ぶ場合や深刻な場合は、コーキングの全面的な打ち替えが必要となることがあります。
剥離
剥離は、コーキング材が外壁や建材から離れてしまう現象を指しており、劣化が進行した最終段階の一つとして認識されています。
剥離が発生すると、コーキングの防水機能が完全に失われ、雨水の侵入リスクが著しく高まります。主な原因としては、経年劣化による接着力の低下、不適切な施工、建物の動きによるストレスなどです。
剥離は特に、異なる材料の接合部や動きの大きい箇所で発生しやすく、サッシ周りや外壁の目地などで頻繁に見られます。
剥離が確認された場合はその部分のコーキングは機能を失っているため、速やかな打ち替えが必要です。
ブリード現象
ブリード現象は、コーキング材に含まれる可塑剤や油分が表面に浮き出てくる現象を指しており、コーキングの施工後1〜2年程度で発生することが多いです。
特に、外壁塗装直後のコーキングで発生しやすく、塗装の美観を損なう要因となります。
ブリード現象が起こると、コーキング材の表面が黒ずんだりべたついたりする状態になり、周囲の塗装面を汚染したりコーキング自体の劣化を加速させたりする可能性があるため、注意が必要です。
既にブリード現象が発生している場合は、コーキングの打ち替えを検討する必要があります。
断裂
断裂は、コーキング材が完全に切れてしまった状態です。
これは、コーキングの劣化が極度に進行した場合に起こり、防水性能が完全に失われた危険な状況を示しています。
断裂の主な原因には、建物の動きによる過度のストレス、極端な温度変化、紫外線による材質の劣化などがあります。
建物の構造上、動きの大きい箇所や異なる材料の接合部で発生しやすく、外壁の目地やサッシ周りで起こるケースが多いです。
断裂が生じると雨水の侵入が容易になり、建物内部への水の浸入や外壁材の劣化、さらには構造体の損傷につながる可能性が高くなります。
欠落
欠落は、コーキング材の一部または全体が脱落してしまう現象を指しており、長期間の劣化や施工不良、外部からの衝撃などが原因です。
外観上はコーキングが部分的または全体的に無くなっており、外壁材の継ぎ目や窓枠周りなどが剥き出しになっていることが多いです。
欠落が発生すると、コーキングが本来埋めるべき隙間が完全に露出してしまい、雨水の侵入を許してしまいます。
放置すると雨漏りや外壁材の劣化、建物の内部構造への悪影響などを引き起こす可能性が高いため、発見次第、速やかに補修や打ち替えをする必要があります。
まとめ
この記事では、コーキングの概要や種類、コーキングで注意すべき劣化のサインなどについて解説しました。
コーキングは外壁材の隙間を埋めるだけではなく、水の侵入防止や揺れの抑制、空気の出入防止など、快適な住環境を保つうえで重要な役割を担っています。
補修やメンテナンスを適切に行っていてもいずれは劣化してしまうため、上記で紹介したサインがある場合は速やかに専門業者に相談しましょう。
『ホーム・インテリジェンス』は、外壁塗装と屋根リフォームの専門会社です。
お客様一人ひとりのニーズに合わせた丁寧な提案力を強みとしており、コーキングの劣化状況を適切に診断し、増し打ちや打ち替えなど、最適な補修方法を提案します。
また、外壁塗装においても、建物の状態や環境に応じた最適な塗料や工法を選定しますので、コーキングの劣化が気になる方や外壁塗装を検討している方は、ぜひお気軽にご相談ください。