外壁塗装を行う際は、必ずといっていいほど足場が住宅の周りに設置されます。
当たり前のようにある足場ですが、その役割や必要性、費用相場などについて知っている方は少ないです。
外壁塗装を検討している方のなかには、「足場って本当に必要?」「費用が高いのはなぜ?」と考えている方もいるのではないでしょうか。
この記事では、足場の概要をはじめ、外壁塗装の種類や必要性、費用相場や業者の選び方などについて詳しく解説します。
そもそも足場とは?
足場とは、建設現場や工事現場で作業員が安全かつ効率的に作業を行うために設置される仮設の構造物であり、建物の建築、修繕、塗装、解体など、さまざまな工事で使用されます。
ここからは、足場の役割や設置する際の基準について解説します。
足場の役割
足場の主な役割は、大きく2つに分けられます。
1つ目は、高所での作業を安全に行えるようにすることです。建物の外壁塗装や修繕作業など、地上から離れた場所での作業を可能にし、作業員が安定した足場の上で作業できるようにします。
2つ目は、近隣への影響を防ぐことです。足場に養生ネットや養生シートを取り付けることで工事現場からの飛散物や落下物を防止し、騒音を軽減する役割も果たします。
足場は作業の進捗に合わせて柔軟に組み立て・解体できるため、工事全体の円滑な進行を支援する重要な要素となっています。
足場の基準
足場の設置と使用に関する基準は、労働安全衛生法に基づいて厚生労働省が定めており、高さ2メートル以上の作業場所では墜落の危険がある場合に足場の設置が義務付けられています。
作業床の幅は40cm以上とし、床材間の隙間は3cm以下、床材と建地との隙間は12cm未満に制限されています。
また、墜落防止のための設備として、高さ85cm以上の手すりや35cm以上50cm以下の中さんの設置も求められており、物体の落下防止措置として、高さ10cm以上の幅木やメッシュシートの設置も必要です。
さらに、足場の安全点検が義務付けられており、作業開始前の点検や悪天候後の点検、その記録の保存が求められます。
足場の種類
外壁塗装や建設工事で使用される足場には、さまざまな種類があります。ここでは、外壁塗装でよく使われている足場を紹介します。
単管足場
単管足場は、鉄パイプ(単管パイプ)とクランプと呼ばれる接続金具を組み合わせて構築する足場です。
この足場は幅や高さを自由に調整できることが特徴であり、ビルの隙間や狭小地など、特殊な形状の建物や場所での工事に適しています。
単管足場は比較的安価で設置できるメリットがありますが、組み立てと解体に時間と労力がかかるというデメリットもあります。
また、強度や安全性は他の足場と比べてやや劣る傾向にありますが、柔軟性が高いため、さまざまな状況に対応することが可能です。
単管ブラケット足場
単管ブラケット足場は、単管足場の改良版として開発された足場であり、単管足場の固定にブラケットと呼ばれる金具を使用して強固に固定していることが特徴です。
床板には枠組み足場と同様にアンチ(足場板)を使用します。単管ブラケット足場は、単管足場の利点である狭い場所での作業が可能という特徴を維持しつつ、安全性と強度を向上させています。
ただし、単管足場と同様に、部品数が多いため組み立てと解体に時間を要する点はデメリットといえるでしょう。
この足場は、中規模の建築工事や外壁塗装、修繕工事などで広く使用されており、単管足場では強度が不足する場合の代替として選択されることが多いです。
くさび緊結式足場(ビケ足場)
くさび緊結式足場、通称ビケ足場は現在最も広く使用されている足場の一つであり、支柱に一定間隔で付いた「こぶ」に水平材や斜材をくさびで緊結して組み立てることが特徴です。
組み立てが容易で、作業効率が高いことが大きな利点であり、安全性も高いことから、作業員の転落リスクを低減します。
ビケ足場は、外壁塗装工事において特に人気があり、多くの塗装業者が採用していますが、くさびを打ち込む際の騒音が発生するため、近隣への配慮が必要です。
屋根足場
屋根足場は、急勾配の屋根や高所での作業を安全に行うために設置される特殊な足場であり、屋根塗装や屋根修理、太陽光パネルの設置など、屋根に関するさまざまな工事で使用されます。
一般的に、屋根の勾配が5.5寸(約30度)以上の場合に必要であり、作業員の転落を防ぎ、安定した作業環境を提供することが主な役割です。
屋根の形状や勾配に合わせて組み立てられ、屋根面に沿って設置されます。屋根足場の設置には専門的な知識と技術が必要であり、安全性を確保するために慎重な施工が必要です。
枠組み足場
枠組み足場は、建設工事で最も一般的に使用される足場の一つであり、鋼製の建枠、布板、筋交い、ジョイント、ブレス、アンチ、手すり柱、階段枠、ジャッキベースなど、多数の部品を組み合わせて構築します。
パーツがすべて部品化されているため組み立てが容易で、耐久性が高く頑丈な足場を構築できる点が、枠組み足場の特徴です。
最大45メートルまでの高さに対応可能で、大規模な建築工事や高層ビルの建設、大型商業施設、学校、公共施設の建築、修繕、塗装、解体工事などで広く使用されています。
足場の必要性
塗装工事において足場の設置は不可欠です。足場は作業員の安全確保、作業効率の向上、周辺環境への配慮など、多岐にわたる重要な役割を果たします。
ここでは、足場の必要性について詳しく解説します。
作業する人の安全確保
塗装工事における足場の最も重要な役割は、作業員の安全を確保することです。
高所作業は常に転落のリスクを伴いますが、適切に設置された足場があれば、このリスクを大幅に軽減できます。
足場は安定した作業台を提供し、作業員が安心して移動や作業を行えるようにするものであり、手すりや安全ネットなどの安全設備を取り付けることで、さらに安全性が向上します。
脚立やはしごでは得られない安定性と広い作業スペースにより、作業員は集中して作業に取り組むことができ、事故のリスクを最小限に抑えることが可能です。
作業性の向上
足場の設置は作業効率を大幅に向上させます。広い作業スペースが確保されることで、作業員は自由に動き回り、必要な道具や材料を手元に置くことが可能です。
これにより、頻繁な上り下りが減少し、作業の中断も最小限に抑えられます。また、安定した足場上では、塗装作業をより丁寧に行うことができ、仕上がりの品質向上にもつながります。
特に外壁の細部や複雑な形状の部分でも、足場があることで近づいて作業ができ、均一で美しい仕上がりを実現できます。
近隣への配慮
足場の設置は、工事中の近隣への配慮にも大きく貢献します。
足場に取り付けられるメッシュシートは、塗料や水の飛散防止だけではなく、工事現場の目隠しとしても機能し、作業中の様子が直接見えることによる不快感の軽減とプライバシーの保護につながります。
また、足場とメッシュシートの組み合わせは、工事中の騒音を若干ではありますが軽減する効果もあるため、近隣住民に迷惑がかかりにくいです。
足場の存在自体が工事中であることを明確に示すため、近隣住民に注意を促す役割も果たします。
足場の費用相場
外壁塗装における足場の相場は、1平方メートルあたり700円から1000円程度です。一般的な戸建て住宅の場合、足場代として20万円前後かかることが多いでしょう。
ただし、この金額には足場の設置・解体だけではなく、作業期間中の足場やシートのメンテナンスも含まれています。
ただし、マンションや高層建築物、階段の多い家では、運搬費用などが加算され、相場よりも高くなることもあるため、注意が必要です。
足場代は外壁塗装費用の約2割を占める重要な要素のため、単に価格の安さだけでなく、安全性や品質も考慮して判断するようにしましょう。
足場費用を自分で算出する方法
足場費用を概算で算出するには、まず足場を組む面積を計算する必要があります。
はじめに、建物の外周に4.8mを加えた長さに、建物の高さを掛けて求めます。次に、この面積に足場設置費(700~1000円/平方メートル)と飛散防止ネット費(100~200円/平方メートル)を加えた単価を掛けることでおおよその足場費用を算出することが可能です。
ただし、この方法はあくまで概算であり、建物の形状や立地条件によって実際の費用は変動します。正確な見積もりは、業者に依頼して確認するようにしましょう。
足場費用が高くなるケース
ここでは、足場費用が高くなるケースを紹介します。
狭小地の場合
狭小地での外壁塗装工事は、足場の設置に特別な配慮が必要となり、費用が増加することも珍しくありません。
隣家との距離が近い場合は足場材の搬入や組み立てが困難になり、通常よりも時間と労力がかかります。
また、極端に狭い場所では、足場を別の場所で組み立ててからクレーンで運び入れるケースもあり、その場合はクレーン代も追加されます。
さまざまな要因によって費用が変動するため、狭小地での足場費用は標準的な場合と比べて高くなる可能性が高いです。
カーポートがある場合
カーポートの存在は外壁塗装の足場設置に影響を与えることが多く、追加費用が発生する要因の一つです。
足場を組む範囲内にカーポートがある場合、そのままでは足場を設置できないため、一時的に取り外すのが一般的です。
カーポートの取り外しと再設置には専門的な技術と時間が必要で、これらの作業に対して追加費用が発生します。
また、ベランダルーフやグラスライトなども同様に取り外しの対象であり、取り外しに伴う作業と特別な配慮が費用増加の要因となり得ます。
3階建ての場合
3階建ての建物の外壁塗装では、一般的な2階建ての建物に比べて足場の高さが増すため、その分費用が上昇します。
2階建ての平均的な高さが約6mであるのに対し、3階建ては約8.5mになります。この高さの違いにより、足場代に5~15万円程度の追加費用が発生することも珍しくありません。
また、高所作業となるため、安全性確保のためにより堅固な足場構造が必要となり、これも費用増加の要因となります。
足場が無料といわれた場合は注意が必要
外壁塗装や屋根塗装の見積もりを依頼する際に、業者から「足場代が無料です」といわれることがありますが、足場の設置には人件費や資材費がかかるため、実際には無料で提供することは難しいです。
「足場代が無料」と謳う業者は、足場代を他の費用に上乗せしている可能性があります。
たとえば、塗料代や施工費に足場代を含めることで、見た目上は足場代が無料のように見せかける手法です。このような業者は、他の部分でコストを削減するために手抜き工事を行うリスクもあるため、注意しなければなりません。
「足場代が無料」という言葉に惑わされず、見積書の各項目を詳細に確認して不当な請求がないか確認することが大切です。
優良な塗装業者の選び方
不当な足場費用を回避するためには、優良な塗装業者を選ぶことが重要です。
ここでは、優良な塗装業者の選び方を紹介します。
施工実績で選ぶ
塗装業者を選ぶ際、施工実績は重要な判断材料の一つです。豊富な実績を持つ業者は、技術力や経験が豊富であることを示しています。
業者のウェブサイトや資料で、過去の施工事例や顧客の声を確認しましょう。具体的な写真や詳細な説明があれば、その業者の仕事の質を判断することが可能です。
また、実際に施工した物件を見学させてもらえるかどうかも確認してみましょう。現場を直接見ることで、仕上がりの質や耐久性をより具体的に確認できます。
担当者の対応で選ぶ
塗装業者の担当者の対応は、その会社の信頼性を判断する重要な要素です。
優良な業者の担当者は、顧客の要望をしっかりと聞き、専門用語を使わずに分かりやすく説明してくれます。また、強引な営業や即決を迫るような態度は避け、顧客が十分に検討できる時間を与えてくれるはずです。
質問に対して具体的で明確な回答ができるか、メリットだけではなくデメリットも説明してくれるかなど、正直に詳細な内容を説明してくれる担当者は信用できます。
保証やアフターフォローの有無で選ぶ
塗装工事後の保証やアフターフォローは、優良な業者を選ぶうえで重要な判断基準であり、信頼できる業者であれば、工事完了後も責任を持ってしっかり対応してくれます。
保証内容をしっかりと確認し、どのような場合に保証が適用されるのか、保証期間はどれくらいかを明確にしておくことが大切です。一般的に、外壁塗装の保証期間は5〜10年程度ですが、業者によって異なります。
アフターフォローが充実している業者は、施工後のトラブルにも迅速に対応してくれるため、長期的な安心感が得られるはずです。
まとめ
この記事では、足場の概要や種類、足場の必要性や費用相場、費用が高くなるケースや業者の選び方などについて解説しました。
外壁塗装における足場は、作業員の安全確保や作業性を向上させる重要な役割を担っており、質の高い仕事をするうえで欠かせない存在です。
足場費用は住宅の大きさや立地条件など、さまざまな要因によって変動するため、心配な場合はあらかじめ業者に詳細を確認しておくようにしましょう。
『ホーム・インテリジェンス』は、外壁塗装と屋根リフォームの専門会社です。
足場費用の詳細が把握できる正確かつ明瞭な見積もりを提供し、顧客一人ひとりの予算やニーズに合わせて丁寧な提案と施工を行います。
費用に関することでわからないことや気になることがあれば、納得できるまで丁寧に説明しますので、外壁塗装を検討している方は、ぜひお気軽にご相談ください。